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インドで活躍する卒業生たち(7)

フィールドワークにはヒンディー語が必須

齋藤隆太さん(国際開発学部 開発協力学科2007年卒業)

拓殖大学に入学するまで、私はインドに対してほとんど興味がなく、たくさんの牛とカレー料理――そんな漠然としたイメージしか持っていませんでした。

インドに強い関心を持つようになったきっかけは、大学3年の夏、大学の「個人研修奨学金」制度で行くことのできたインド短期留学です。ヒンディー語がほとんど話せず、ホストマザーとまったく意思の疎通ができない状態で始まった留学生活でした。 

同じ奨学生の仲間たちと四苦八苦しながらヒンディー語を学び、貯水タンクに水を引くために汗まみれになり、辞書を引き引きホストマザーと会話して、怒涛の6週間は過ぎ去っていきました。生活するだけで精一杯な、でも、不思議と充実した日々でした。留学生活も終わり近くになり、伝えたいことがホストマザーにきちんと伝わった時の喜びと、その際にニッコリ笑ってくれた笑顔が、今でも忘れられません。

インターン:他大学の学生やソーシャルワーカーたちと大学を卒業後、一般企業でしばらく働きましたが、一念発起して、デリーにあるインド政府中央ヒンディー語学院に留学。一年間、ヒンディー語を学びました。さらにデリー大学の大学院に進学。現在は修士課程でソーシャルワークを学んでいます。デリー大学のソーシャルワーク学部は、60年以上の歴史を持つ、インドでも最古のソーシャルワーカー育成機関の一つです。
(写真)インターン:他大学の学生やソーシャルワーカーたちと)

私たちが目指すソーシャルワーカーとは、生活に問題を抱えている人や、社会的に抑圧されている人たちに援助を提供し、社会の良い変化や私たち人間の福利の増進をはかる専門家のことです。そのため多くのクラスメイトが、今のインド社会を良くしたいという強い信念を持っており、授業は非常に白熱します。先生への質問や学生同士の議論が盛んに行なわれ、時には加熱しすぎて授業が中断してしまうこともあります。

インドを表す言葉で「unity in diversity(多様性の中の調和)」という表現がよく使われますが、私のクラスはまさにその通りです。インド北東部から来た、私たち東アジア人そっくりな顔立ちの学生や、中東圏やヨーロッパの人々の顔立ちに近いカシミール州からの学生もいます。

留学生は私のほかに3人(インドネシア、スリランカ、エリトリア)。共通語は英語(または多くの学生にとってはヒンディー語)ですが、クラスメイトの母語はヒンディー語、ベンガル語、タミル語、ナガ語、マラーティー語、カンナダ語など多彩で、ヒンディー語を話せないインド人学生も少なくありません。ヒンドゥー教徒のほかに、キリスト教徒やイスラム教徒もいて、習慣や食のタブーなど大きく違うので、クラスメイトと食事に行くと、メニューを決めるのがいつも大変です。

調査:地方都市のコミュニティーで調査授業は英語で行なわれていますが、授業の一環でフィールドワークをする機会も多く、そのときはヒンディー語の力が必須です。とりわけ私がインターンをしている、ホームレスの方たちが対象のナイトシェルターでは、英語が全く通じないため、毎日ヒンディー語の辞書を片手に聞き取り調査をしたり、スタッフと話し合ったりしています。
(写真)調査:地方都市のコミュニティーで調査

また日常生活でも、市場での買い物や、オートリキシャー(三輪タクシー)に乗るときなど、ヒンディー語で値段交渉をすると、安くなったりします。

デリーのような大都市には、英語に堪能な人も多く暮らしています。生活するだけならば、英語だけでこと足りますし、私のような留学生には英語が必須です。しかし多くのインド人にとっては、英語はコミュニケーション・ツールであって、母語ではありません。英語でインドの人と話をしている時、私はどことなく心の隔たり、溝を感じます。

ホーリー:ホーリー(インドのお祭り)の際にクラスメイトや教授とその壁を取り外してくれるのがヒンディー語だ、と私は思います。ヒンディー語でインド人に話しかけると、こちらがびっくりするほど嬉しそうにしてくれます。強面のおじいさんや、眉間にしわを寄せたおばさんが、ヒンディー語で話をすると急にニコニコと笑い出します。それが母語の持つ力なのでしょう。インド人との距離を一歩も二歩も近くしてくれる言葉。ヒンディー語は私にとってそんな言語です。

フィールドワークで訪れた農村や、買い物帰りに立ち寄った道端の茶店チャ―イ屋で、そこにいる見ず知らずの人とカタコトながらも話ができ、一緒に笑い合うことができる。そんなとき、ヒンディー語を勉強してきて本当に良かったな、と感じます。【このシリーズは本稿で終わります】
(写真)ホーリー:ホーリー(インドのお祭り)の際にクラスメイトや教授と

 

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