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「アメリカ長期研修レポート」 須田仁実さん

The difference in value -異なる価値観をみたアメリカ留学-

政経学部 経済学科 2年 須田仁実さん(海外留学プログラム・アメリカ長期研修参加)
半年間アメリカで生活をし、アメリカで生活している人と日本で生活をしている人の違いを目の当たりにしてきました。その中でも特に私が大きい違いだと感じたことをお伝えします。

 

まずは自分の宗教を持っているかいないかという違いです。

サンフランシスコでNBA観戦!
サンフランシスコでNBA観戦!

宗教が違うから困った、持っていないのが悪いということではありません。それぞれが宗教を持っていることにより他人に価値観を押し付けることが無いということです。日本人は宗教や人種について意識することがあまりないため、日本全体に共通の価値観というものがあります。それにより、何が良いのかは既に決まっているような、まるで理想を押し付けられているのではないかと感じたり、周りの目を過剰に気にしたり、息苦しさを感じたりする人が多くいるように思います。

アメリカではそれぞれが宗教を持っているという前提の下に、人それぞれ違うという考えに基づいて判断しているので、人に何かを押し付けたり、むやみに干渉しようとしたりすることは明らかに少なく、「私はこういう考え方です」といえば、周りは納得しているように思いました。しかし、そんなアメリカでも、人種、ジェンダー、同性愛者への偏見など、互いに違いを認めることは難しいこともあるということを学びました。

大学の正規の授業でSocial Problemを受講した際に、アメリカンドリームというものは簡単に存在するものでは無いとわかりました。どんな人種であっても個人の努力次第で成功できる可能性も大いにありますが、人種、ジェンダー、同性愛者への偏見により与えられる機会に不平等があることは事実です。

 

次の相違点は、大学で求められる力と大学生の意識です。

グランドキャニオンでヘリコプター遊覧ツアー!
グランドキャニオンでヘリコプター遊覧ツアー!

アメリカの大学では、自分の意見を持ち、それを人に伝えることが常に求められました。授業やオンラインでのディスカッションが頻繁に行われたり、(自分の大学との比較にはなってしまいますが)エッセイを書く回数が明らかに多かったりと、ただ授業を理解してテストの点数が取れるだけでは十分ではないのです。

そして大学生活を送る上で、大学に通う意味の捉え方には大きく違いがあると感じました。「将来これがしたいから、そのためにこの大学に通い、この専門を学んでいる」という意識を持っていることが当たり前とされていました。また、日本では自分が専攻した分野とは関係無くても就職することは可能ですし、それを望む大学生も多くいます。

この事実は、アメリカの学生にとって、理解に苦しむようでした。自分でローンを組み大学に入り、勉学に励みやっとの思いで卒業した自分の専門を何の役にも立たせないというのは、何のために大学に行ったのかと感じてしまうという意見でした。アメリカでは編入は特別なことではありません。

大学の授業料は高額なため、まずはコミュニティカレッジへ行き、ある程度の単位を取得したあと大学に編入することも珍しくはありません。その一方で日本の大学は、編入はアメリカほど一般的ではありません。また入学する時点で専門を決めなくてはなりませんし、途中で専門を変更することは可能ですが、単位認定の問題などアメリカより困難なように思えます。その点、自分の専門とは関係なくても就職できるという日本の現状は、自分の分野を狭めることなく、選択できることはありがたいことです。

しかし、将来のビジョンをはっきり持った上で授業に臨むという姿勢は見習うべきだと思いました。卒業後に自分がしたいことを念頭に大学の授業に臨むことで、モチベーションや自分に入ってくる情報の捉え方も変わってくると思うので、この点はアメリカの大学生を見習おうと決意しました。

 

最後の違う点は、家族への思いや家族との休日の過ごし方です。

ESLの先生と最後のお別れパーティーにて
ESLの先生と最後のお別れパーティーにて

まず、金曜日の授業後に寮まで親が車で迎えに来るというのは驚きました。毎週ではありませんが、多くのアメリカ人学生は頻繁に実家へ帰っていたように思います。Thanks giving dayやクリスマスはもちろん、家族の誕生日、スポーツの試合観戦ではスタジアムに一緒に行くのではなくてテレビでの観戦でさえ家族そろって実家で楽しむというのが一般的でした。

日本の大学生で下宿している人は、距離、交通機関、費用の問題もあるかもしれませんが、こんなに頻繁には帰らないように思います。現在、日本で学校週6日制に8割賛成という報道がありましたが、私は反対です。

アメリカで半年間生活してみて、週末を有意義に過ごせると次の一週間も頑張ろうという活力が湧くことを実感しました。金曜日にテストがあることが多かったので、月曜日から金曜日は、金曜日の授業の後のことだけを楽しみに乗り越えていたように思えます。アメリカで生活している人は、この切り替えが大変上手だと感じました。

アメリカでは、「週末何するの?」とよく聞かれます。それほど週末を楽しみにして平日を乗り越えているのだと感じました。週末を寝て過ごすというのは考えられないかもしれません。これは、お店の経営にも反映されており、アメリカのThanks giving dayやクリスマスはことごとく店が閉まっていました。レストランでさえ閉まっているところは多く、旅行者としては困りました。

日本の場合、こういうときこそ稼ぎどきだといって働く会社が多いので大変驚きました。しかし、日本でこういったサービス業に就いた場合、世間の人と休みが合わず辛い思いをしている人も多いように思えますが、アメリカではサービス業に就いたとしても家族と過ごす時間を確保出来るのは素晴らしいことです。

消費者としては不満を感じたところもありましたが、もし自分がアメリカで生活をしていて、家族が大切な休日に、必ず休みが取れて一緒に過ごす時間をもつことが出来たならばこの上ない幸せだと思いました。

 

この半年間のアメリカでの留学で得たものは数えきれません。

語学力、勉学に対する前向きな姿勢、何があっても味方になってくれる家族、いつも力になってくれる友達、尊敬する先生、旅行を通して見た大自然・治安の悪い地域・洗練された都市。

しかし今回ここで私がお伝えしたアメリカと日本の相違点は、私にとっては人の生き方の根幹にあるものの違いだと感じましたので、紹介させて頂きました。こうした一見目にしただけではわからない違いに気付けたことは大きな財産です。短期間では文化に触れる程度になってしまいますが、長期研修のおかげでアメリカでの生活を経験し、語学研修だけではなく、日本との比較をすることが出来ました。

母国語でない言語で、表面的なことだけでなく深い話をするのは、単語一語が仇となり自分の考えがなかなか正しく伝わらなく難しかったです。しかしお互いの生き方についての考えをぶつけ合ったとき、こういう話をするために英語を学んできて良かったと実感しました。

またアメリカで生活しなければ考えることのなかった人種、ジェンダー、同性愛者などの社会問題に向き合うことが出来ました。そして、同じ問題が日本ではどのように捉えられているのかを知りたい、そしてアメリカ人にも日本の社会についても説明出来るようになりたいという意欲が湧いてきました。6ヶ月間で習得したことをここで止めたくないというのが現在の率直な気持ちです。ESL(English as Second Language)の最終レベルを卒業することが出来たので、次は正規の授業に挑むことが私の目標です。

 

最後になりましたが、長期研修に参加するにあたり支えてくださった全ての人に感謝申し上げます。皆様のご支援無しにはここまで来ることは出来ませんでした。本当にありがとうございました。

掲載日:2013年04月05日

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