拓殖大学関連の刊行物
『法と経済学 企業組織論に係る分析手法の研究 -財産権、取引コスト、エージェンシー・コスト、コースの定理の関連性』 中村竜哉(商学部教授)著
中国企業の改革やコーポレートガバナンスに関する研究では財産権の創造や改革がよく問題にされる。温暖化ガスの排出量取引に関する研究ではコースの定理が紹介されている。株式会社の資本構成問題や開示された会計情報と株価の関係における分析では、エージェンシー・コストが分析手法として使われている。フランチャイズなどの中間組織に関する分析では取引コストが分析手法として利用されている。
このように、財産権、取引コスト、エージェンシー・コスト、コースの定理はよく利用される分析手法であるにもかかわらず、基礎研究が少ない。そこで、本書は次の3つの目的を掲げてこの基礎研究に取り組んだ。第1に、「財産権とは何か」「取引コストとは何か」といった疑問に答えることである。
第2に、コースの定理が取引コスト論、エージェンシー・コストの理論、財産権理論に与えた影響を明らかにすることである。第3に、取引コスト論、エージェンシー・コストの理論、財産権理論の特徴や問題点を正確に解釈することである。
上の3つの目的を達成するために、約90年分の文献を精読し、10章分の紙面を費やして最終的に46の結論を得た。最も重要な結論は、財産権がうまく創造・維持・強制されない結果、無駄使いされた資源が取引コストであり、エージェンシー・コストであり、これら2つのコストは同義であるというものである。
出版社 / 発行
拓殖大学研究叢書(社会科学)37/ 2010年12月15日
著者紹介
中村 竜哉(なかむら たつや)
1964年東京都生まれ。明治大学商学部卒、明治大学商学研究科博士後期課程退学。小樽商科大学教授を経て、現在本学商学部教授。中小企業診断士、証券アナリスト、FPの資格を有する。日本経営財務研究学会、日本経営学会所属。主な著書に『コーポレート・ファイナンス(白桃書房、2008年)』、共著に『プレステップ会計学(弘文堂、2009年)』『現代経営財務政策の新展開(中央経済社、1993年)』がある。
掲載日:2010年12月15日