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インドで活躍する卒業生たち(4)
ヒンディー語という杖に支えられて
大上 愛さん (国際開発学部アジア太平洋学科2007年卒)
わたしはいまインドの首都デリーで、家庭の主婦として、そして日系商社(現地採用)で働く女性として、生活しています。この国は経済成長が目覚ましく、世界各国から注目を集めていますが、また、宗教の国としても大変有名であり、「何かを求めて」インドを旅する若者も多くいます。もしインドに興味がある、将来インドで仕事をしたいという方がいれば、その扉となってくれるのが拓殖大学の第二外国語のヒンディー語です。
私にインドとの繋がりを与えてくれたのが、このヒンディー語の授業でした。またその履修を続けたことで、大学の「個人研修奨学金」制度を利用して、在学中にバナーラスで語学研修を受けることができました。これらの積み重ねが、後のデリーでの長期留学のうえで、学びと生活に大きな知恵を与えてくれました。
拓大のヒンディー語の授業は、文法だけでなく、インドの歴史、インド人の習慣、ボリウッド映画(ヒンディー語の映画。ミュージカル場面が有名)の面白さなどを教えてくれました。また、インドを愛し、インドの言語を愛する先生方の魅力が素晴らしいものでした。
正直なところ、英語教育が盛んなインドでは、ヒンディー語ができなくてもビジネスはできます。北インドでは、政府オフィス、銀行や私立病院等の施設に行くと、英語が話せないことで順番を遅らされたり、見下されたりすることもあるほどです。しかし、英語ができるだけでは100点満点とはいかないところが、インドの面白さでもあるのです。
ときにはうらやましがり屋のインド人に出くわすことがあります。その人はあなたがヒンディー語を話すと、「この人は英語ができない」と言い、あなたが英語を話すと「この人はヒンディー語が分からない」と言います。ときどき、このような複雑さ、多様さが私たちをどっと疲れさせます。
しかし、インドで暮らすなかであなたがヒンディー語を流暢に操れることは、本当に強い長所となります。あなたが熱心にヒンディー語を話すとき、インドの人々は本当に心を開いてくれます。少しくらい間違えたからといって、見下す人はいません。12億人以上の人口に加え、非常に多数の言語があるインドでは、「純ヒンディー語」を操る人を探す方が難しいくらいだからです。ヒンディー語を母語としない人々のなかには、映画鑑賞や人々との会話を通じてヒンディー語を学ぶ人が多くいます。
私は昨年2月に、南インドのケーララ州出身の主人と結婚しました。私の通うデリーの教会で初めて会話をかわしたとき、私がヒンディー語を話したために驚かれました。現在の家庭でも、多くの場合にヒンディー語で話しています。また、英語を話さないお義母さんとの共通語もヒンディー語です。
大学でヒンディー語を履修していたときは、自分がインド人と結婚するとは思ってもいませんでした。しかしいま振り返ると、その道は全てが備えられたものであり、その道をいつも、ヒンディー語という杖に支えられて歩んできたのだ、と気付かされます。
ヒンディー語は、インドでの護身術であると同時に、人々の関係を繋げてくれる有益なものだと日々実感しています。受験生や在学生の皆さんにも、是非ヒンディー語を学んでもらい、インド、インドの人々の魅力を体感してもらいたいと願っています。
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掲載日:2012年11月01日